ギリシャ旋法——1つの音階、7つのホーム
モードはたいてい「壁」として提示されます。ギリシャ語の名前を持つ7つの音階が並び、それぞれに固有の公式があり、1つずつ覚えていく——そんな見せ方です。難しく感じる原因はまさにその提示の仕方にあり、しかもそれは避けられます。ここにある音階は1つだけ。変わるのは、その中のどの音をホームとして扱うか、それだけです。
1つの集まり、7つのホーム
ピアノの白鍵をドから次のドまで弾けば、それはメジャースケールです。同じ白鍵を、今度はレからレまで弾いてみましょう。音を足しても引いてもいません。それが ドリアン です。同じ7つの音、違うホーム。
7つの音それぞれから同じことをすれば、7つのモードがすべて出そろいます。
| 開始音 | モード | 別名 |
|---|---|---|
| ド | イオニアン | メジャースケール |
| レ | ドリアン | |
| ミ | フリジアン | |
| ファ | リディアン | |
| ソ | ミクソリディアン | |
| ラ | エオリアン | ナチュラルマイナースケール |
| シ | ロクリアン |
7つのうち2つは、誰かが「モード」と呼ぶよりも前から名前を持っていました。イオニアンはメジャースケールであり、エオリアンはナチュラルマイナースケールです。音階のレッスンで説明した平行調(相対的短調)の関係とは、じつはモードの考え方が別の名前で早めに顔を出していたものなのです。
なぜ開始音を変えるだけで響きが変わるのか
音は同じなのですから、変化はどこか別のところから来るはずです。実際そのとおりで、変化は2つの半音のステップが ホームから見て どこに落ちるかから生まれます。
メジャースケールでは、半音は第3音と第4音のあいだ、第7音と第8音のあいだにあります。同じ集まりを別の音から始めても、半音の位置そのものは動きません。動くのは番号のつけ方です。だから半音は違う場所に現れます。ドリアンの半音は、第2音と第3音のあいだ、第6音と第7音のあいだに位置します。仕組みはこれがすべてです。以下に挙げるモードの性格の話は、すべて「半音がどこにあり、したがってどの音がホームへ傾くか」の話にほかなりません。
それぞれの響き
- イオニアン — メジャーの音楽が持つ、明るく落ち着いたごく普通の響き。ほかのすべてはこれと対比して聞かれます。
- ドリアン — マイナーでありながら、第6音が半音高いおかげで持ち上がる響き。悲しいというよりクールで開けた感じで、フォーク、ファンク、モーダル・ジャズで大量に使われます。
- フリジアン — マイナーに、ホームのすぐ半音上に置かれた♭2度。緊張感のある暗さと、スペイン風の色合いが生まれます。
- リディアン — メジャーの第4音を半音上げたもの。浮遊感があり、どこまでも開けていて、映画音楽の「驚き」や「広大さ」の響きです。
- ミクソリディアン — メジャーの第7音を半音下げたもの。ホームへ強く引き寄せる音がないため、ブルージーでロック的、リフの効いた響きになります。
- エオリアン — 素のナチュラルマイナー。暗く落ち着いた、西洋音楽の標準的なマイナーです。
- ロクリアン — ホームの上の第5音が半音下がっているため、ホームのコード(和音)がディミニッシュになり、決して安定しません。曲よりも理論の中で語られることのほうがはるかに多いモードです。
モードを本当に決めているもの
音の集まりではモードを区別できないなら、区別しているのは別の何か——すなわち音楽そのものです。トニックは振る舞いによって決まります。ベースが繰り返し戻ってくる音、フレーズが終着する音、セクションが解決するコード(和音)、すべての下で鳴り続けるドローン。
これはこの話題の周辺にある細かい注意点ではありません。これこそが話題の中心です。ドメジャーの伴奏の上でレからレまで走った奏者は、ドメジャースケールを中途半端な場所から弾いただけです。同じフレーズを、ベースがレに腰を据えた上で弾けばドリアンになります。音は何も変わっていません。どの音がホームかを決めたのは文脈です。
音階のレッスンの練習問題は、この事実を軸に作られています。チェックされるのは2点です。正しい音の集まりを選べているか、そして 選んだ中でいちばん低い音がトニックになっているか。2つ目のチェックは細かすぎる注文ではありません。7つの音名の集合だけでは、ドメジャーとレ・ドリアンを区別できないのです。まったく同じ7つの音名なのですから。集合だけを比べる練習問題では、一方を指定して要求することがそもそも不可能になります。両者を分けるものは、開始音だけなのです。
ドリアンは「新しく覚える音階」ではない
モードを頭に入れる方法は2つあり、あとで効いてくるのは2つ目です。
1つ目は相対的な捉え方です。ドリアンはメジャースケールを第2音から弾いたもの、という説明。モードはたいていこう紹介されますし、それは正しいのですが、実際には扱いにくい。今演奏していない調のことを考えさせられるからです。
2つ目は平行的な捉え方——同じホームの音の上に作ったメジャースケールやマイナースケールと比べる方法です。この見方なら、ドリアンは「ナチュラルマイナーの第6音を半音上げたもの」。ミクソリディアンは「メジャースケールの第7音を半音下げたもの」。リディアンは「メジャーの第4音を半音上げたもの」。フリジアンは「マイナーの第2音を半音下げたもの」。どれもすでに知っている音階に対する1音の書き換えであり、こう表現すれば、何がどう違って響くのかが即座にわかります。相対的な説明では決してそうはいきません。
覚えるべきことはこれで全部です。7つの音階と7つの運指ではありません。1つの音階と、動かした1つか2つの音、そして「ホームを決めるのは音の集まりではなく音楽である」という知識。それだけです。